2007年06月04日
タクシーの値上げ? その背景にあるもの・・・・

最近ニュースでよく見る、東京を中心としたタクシー運賃の賃上げ。
東京が決定すれば、その余波が全国に伝播すると言われています。
しかし、消費者にとっては何故賃上げするのか?と不可解な点が多く、今回の賃上げの背景に何があるのかを探ってみました。
■そもそもタクシー運賃はどうやって決まる?
タクシー運賃は全国を84ブロックに分けて、地域ごとに設定されています。
各地域の運輸局へ、タクシー事業社から運賃改定に対する最初の申請があってから3カ月以内に、その申請に賛同する事業社のタクシー台数がブロック内にある全車両数の7割を上回ると運輸局の審査が始まります。そして、運輸局がその地域の実情に合わせて判断します。
タクシーの運賃は自動認可運賃制と呼ばれ、運賃の【上限運賃】と【下限運賃】が認定されます。各タクシー会社は、設定された自動認可運賃の範囲内であれば、どの運賃でも選択することができるようになっています。
最近のニュースで報道される初乗り運賃に触れ幅があるのはこのためです。
■タクシーの賃上げの理由
今回の賃上げの理由は大きく2つです。
1つ目は、昨今のガソリン価格の上昇による経費の上昇です。
2つ目が、タクシー運転手の収入をあげるためです。
(当然、それに伴ってタクシー会社の利益もあがることが含まれています)
実際のところは、この2つ目が本音でしょう。
というのも、以下にタクシー運転手の平均年収を示します。

この図から、タクシー運転手の年収はH17年時点で約270万であり、地域の差はあるものの一般家庭の生活ではかなり苦しい状況にあることがわかります。
これがタクシー業界の最大の不満であると共に、今回の賃上げの最大の理由でもあります。
言わば、業界全体のベアといってもいいでしょう。
■なんで賃上げを国が認めるのか?
さて、ここまで読んでいただいて、違和感を感じている方は多いと思います。
そうです、タクシー運転手の収入が少ないのはわかる。
でも、その収入を国が保障することはおかしいだろうと。
どんな業界でも、それぞれのサービスに対する利用者の評価競争があり、その競争に敗れたものは淘汰されるか、低賃金で運営していくかであり、それが必然であると。
また、はっきり言って、タクシーの台数は多すぎる。
台数が、多くなれば競争も激しくなって賃金も下がるだろうよ。
しょうがないじゃん!、これが違和感の出所ではないでしょうか。
ただ、ここで一つあまり知られていないことだと思いますが
タクシーは公共交通機関であり、運賃は公共料金として扱われ、政府の認可が必要だ。タクシー運賃が上限価格制として、たやすく値上げできない仕組みになっている根拠は、交通機関としての公共性が認められている点にある。 http://www.tramondo.net/old/0411/15/ronten.htm
そうなんです。タクシーの運賃は一般的に公共料金として扱われているため、不当に高額な料金を設定したボックリタクシーなどがでないように制限されているのです。
■タクシーの賃上げは、国の政策の失敗を隠すために許可される可能性がある。
実は少し調べてみると、タクシーは少し前まで数量規制されていたのです。
それが、経済構造改革の規制緩和の名の下に、平成9年の橋本内閣で閣議決定され、平成14年から数量規制は解かれ、タクシーは免許制から許可制へ変わりました。
それから都市部を中心に一気に業者数が増えました。
さらに、
タクシー運転手は、通常の給与労働者とは異なり、歩合制を前提とした雇用契約を経営者と締結する場合が多い。しかし、歩合制である以上、営業収入はタクシー運転者任せにされるが、経営者は営業収入が低下しても一定の総収入を確保したいがため、増車を行う傾向がある。増車の結果、競争が激しくなり、一台当たりの営業収入が低下し、最低賃金や過剰労働の法令遵守問題が指摘される事態が起こっている。
とあるように、業者数も台数も一気に増えていったのです。
その結果、タクシー運転手の年収も、規制緩和が決定されたH9年から一気に下落し始めていることがわかります。
そして、この結果を受けて政府はこうつぶやいています。
需給調整規制の緩和とタクシー運転者の賃金低下の関係については、政府は不況との因果関係も加えつつも、「残念ながら景気の動向あるいは著しい増車の関係ということもありまして、タクシーの一台当たりの収入が減少を続けておると。そのためにタクシー運転者の収入が低迷しておるということで、私どもとしても非常に残念な事態だという認識を持っております」と答弁しており、その事実について、一定の理解を示しているものと言えよう。第163回国会参議院国土交通委員会会議録第1号18頁(平17.10.25)
要は、予想していたことと違っていましたと公言しています。
さらに、
一方で規制緩和による競争激化を招いておいて、一方で原油価格の高騰を奇貨として値上げ認可でその火を消すような対応では、国としてのタクシー事業に対する経済政策の方向が定まりにくいことを露呈してしまったような感すらある。
そうです!。このままタクシー運転手の低賃金がより社会問題化すれば、矛先はそのきっかけを作った政府側に求められるでしょう。そうしためんどくさい事態を避け、自らの失態を誤魔化すためにも賃上げを許可する可能性があるのです。
このタクシー賃上げ問題は、意外と根が深そうです。
みんなの目でしっかりと事実を追求していきましょう。
参考リンク
国土交通省
需給調整規制撤廃で疲弊しつつあるタクシー事業を救えるか
~タクシー業務適正化特別措置法の一部を改正する法律案~
※国土交通省が政府の方針を批難しているのが興味深い。
- by orimex at 21:18 in 10.経済NEWS・その他



コメント
そこら辺で昼寝しているタクシー運転手の働き方を見ていると、年収270万円って当たり前のような気がします。
貧乏人には貧乏人たる所以がある。
そうですね、確かによく見かけますね、寝ているタクシー運転手。
ただ、運賃に規制がかかり、サービスを向上させて差別化を図ることが難しい一方で、収入が保障されているわけでもなく、なんとも歯がゆい実情はあります。
また、年収はあくまで平均なので、各タクシー会社でもばらつきはあるでしょう。
京都に住んでいた人に聞きましたが、京都にはMKタクシーというサービスのいいタクシー会社があるようで、京都の人はタクシーを呼ぶ時に、「タクシー呼んで」と言わず、「MK呼んで」というらしいです(何処までの人が使っているか定かではないですが・・・・)
そういう評価を得たタクシー会社が残っていくようになればいいですね。