2008年07月08日
シリーズ「どうする?市場の独占支配」5
【第5回:資源メジャーの再編と独占⑤】
6月末から鉄鋼石価格の決定を巡って、様々な動きがありましたのでまとめておきます。キーワードは、「ミッタル」と「ゴールドマン・サックス」。(前回は、こちら)

ラクシュミー・ニワース・ミッタル
インド出身でイギリス在住の資産家ミッタル氏は自身は製鉄所を設立したことが
ないにもかかわらず、驚くべき合併買収の腕前で世界の鉄鋼王に上りつめた人物
宝山鋼鉄が急落、鉄鉱石価格の大幅値上げ合意で(2008/06/24)
24日の中国株式市場で、鉄鋼メーカー大手の宝山鋼鉄が一時10%のストップ安となった。同社は、2008年の鉄鉱石価格について、少なくとも過去10年余りで最も大幅となる値上げで、英豪系鉱山大手のリオ・ティントと合意した。
中国の鉄鋼業界を代表して交渉に当たっていた宝山鋼鉄は、リオとの契約で、最大96.5%の値上げに合意。これは、中国の鉄鋼メーカーがブラジルの鉱山大手ヴァーレ(VALE5.SA: 株価, 企業情報, レポート)と今年、これより先に合意した67―71%の値上げより高い水準で、一部の業界アナリストの予想を上回る大幅な値上げとなった。
宝山鋼鉄、やっちゃった~。2倍近い価格での契約は日本の鉄鋼メーカーにとってもイタイです。
中国も鉄鋼石不足で相当焦ってるんですかね?しかし弱気、というか、リオ・ティント強気!リオ株持ってる中国でもダメですか・・・
しかし、なぜ2倍近い値上げが通ったの?
英豪系資源大手をミタルが買収検討 英紙報道(2008/06/30)
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は30日、鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルが英豪系資源大手リオ・ティントの買収を検討していると報じた。リオは同じく資源大手のBHPビリトンが買収を狙って交渉しているが、そこに割ってはいる可能性がある。買収が実現すれば、鉄鉱石などの原料から、川下の鉄鋼製品までを握る巨大な企業が誕生する。
リオを完全に買収した場合、買収総額は1600億ドル(約17兆円)にのぼるとみられている。既存の株主から株式を一部買い取る可能性もあるという。今年2月に中国アルミが取得したリオ株(計9%)を引き受ける案などが浮上している。
鉄鋼メーカーであるミタルにとって、適正価格での鉄鉱石確保が急務。特にラクシュミ・ミタル最高経営責任者(CEO)が強い危機感を持ち、ミタル自体が鉱山の獲得を積極的に進めていた。
リオ買収にミタル参戦!・・・リオの強気の背景はこれですか。リオもなかなかやりますな。
BHPビリトンvs中国vsミタルの三つ巴!でも、経済失速中の中国はたぶん降りるだろうし、リオは中国には付きませんね。(どこかで「巨龍」という表現がありましたが、どうもハリボテのようで・・・)
これで、BHPビリトンvsミタルの構図か・・・さて、どちらに歩があるのやら?
「鉄鋼王」ミタル氏、ゴールドマン・サックスの社外取締役に(08/07/01-12:56)
「鉄鋼王」ラクシュミ・ミタル氏 インド出身の「鉄鋼王」ラクシュミ・ミタル氏は、投資銀行最大手の米ゴールドマン・サックスの社外取締役に就任した。同社の取締役13名のうち、社外取締役はこれで10人目。同社が6月29日に発表したもので、ミタル氏は監査委員会や給与委員会、企業統治(コーポレート・ガバナンス)兼任命委員会のメンバーも務める。PTI通信がロンドン発30日付で報じた。
同氏は長年にわたってゴールドマン・サックスの顧客でもある。
ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン会長兼CEOは、「経験に裏打ちされた判断力と偏らない考え方を持つミタル氏が当社の取締役会に新たに加わることは非常に重要であり、当社の社員、株主、ならびに顧客に対して大きな価値を与えることになるだろう」と語った。
ゴールドマン・サックスは最近、インドでの投資活動を活発化させている。商用車・トラクター大手マヒンドラ&・マヒンドラの少数株主となったほか、5月にはエンジニアリング企業スターリング&ウィルソンに5,000万ドルを投資している。
ゲゲッ!ミタルがGS(ロスチャイルド系)にくっついちゃった!社外取締役というのは微妙で、短期的かもしれないが、路線は同じやね。(組織的融合ではないので、協同関係といったところか。)
勢い、ミタルが有利だな。BHPビリトンのリオ買収は資源メジャーによる寡占化に対する風当たりが強くなっているし、あんまり寡占が進みすぎると目立つんでミタルを噛ませたか・・・?
ミタルがリオを買収したら、原料を持たない他の鉄鋼メーカーは窮地に追いやられるだろうな。今後の鉄鋼価格決定のキャスティングボードはミタルが握ることになりそうだ。下手をすると、鉄鋼メーカー自体の寡占化が進む可能性が高い。
(注)ミタルの今までの戦略は鉄鋼メーカー買収だったので、それが加速する可能性が高い。なお、ミタルも鉄鋼メーカーなので、鉄鋼価格は市場に応じて自制的にはなるのだろうが、価格を自社に有利に誘導することができる様になると同時にリオ買収で原料を安く手に入れられるので、その利益は計り知れない。恐ろしや、ミタル&GS
豪州産鉄鉱石、80%値上げ 依存度高い日本に痛手(2008/7/1-23:36)国内の鉄鋼大手各社は豪州産鉄鉱石の08年度の調達交渉で、前年度に比べて約80%の値上げを受け入れた。ブラジル産の値上げ幅を15ポイント上回る水準で、調達先で価格変動の幅に差がつくのは異例。豪州に鉱山を持つ英豪資源大手のリオ・ティントとBHPビリトンの統合計画が影響した模様で、豪州への依存度が高い日本には痛手だ。
新日本製鉄やJFEスチールなど鉄鋼大手は鉄鉱石を輸入に頼っている。日本全体では世界首位のバーレ(ブラジル)からの調達に26%を依存。2位リオに39%、3位BHPに20%、それぞれ依存している。
価格交渉は、資源大手と世界の鉄鋼大手のどこかが合意すれば、他社はその変動幅に追随するという商慣行が続いてきた。08年度交渉は、日本勢を含む世界の鉄鋼大手とバーレが2月に65%の値上げで合意。しかし、リオとBHPはこの水準に満足せず、中国などの旺盛な需要も背景に、約80%(一部品種は約97%)の値上げを受け入れざるを得なくなった。BHPとの交渉は残るが、リオと同水準程度の決着が見込まれる。BHPはリオに十数兆円規模での買収を仕掛けており、両社とも自社の株価水準を意識しながら交渉を進めた模様だ。この統合計画をめぐっては、日本の公正取引委員会や欧州連合(EU)などの独禁当局が競争をゆがめる恐れを調べているが、企業経営への影響はすでに出始めたとも言える。
日本の鉄鋼大手の追加負担は1千億円程度で、鋼材1トンあたり約1千円。08年度の自動車、造船会社などとの鋼材交渉は妥結済みのため、鉄鋼各社は再値上げを検討しているが、先行きは不透明だ。
こうなりますわな・・・日本のみな様、これから鉄はまだまだ上がりますので、御覚悟を!(はぁ~ァ...)
鉄鋼石資源市場に鉄鋼メーカーミタルが参戦するとは予想外。現状でも行きすぎた寡占化の新たな展開としては、画期的な場面なのかも知れない。しかし、最近の市場の急激な変化には驚かされます。これらの転換の背後にGSやロスチャイルドなど世界金融資本がどう絡んでいるかが興味深いところです。
資源メジャーのリオ・ティント買収にミタルが参戦したことは新日鐵など日本の鉄鋼メーカーにとっては相当驚異でしょう。巨大資本をバックに根こそぎ支配してくる巨象のイメージだ。資本力ではとうていかなわない。かといって、悪魔に魂を売るわけにはいかない・・・(間違っても売ってはいかんよ)
注意しなければいけないのは、近々世界的な経済の落ち込みがあるだろうことです。その時に、弱った企業は根こそぎ巨大資本に飲み込まれてしまう危機がやってきます。どうかその備えを整えて下さい・・・
(注)リオ・ティントの買収がミタルに決まったわけではありませんので、今後の動きにはまだまだ注意が必要です。今は何が起こるか予想できない環境です。(あしからず)
by コスモス
- by cosmos at 15:37 in 04.狙われる国の資産



コメント
竹中平蔵元大臣はとてもノーベル経済学賞を取れるような研究レベルには達していないように見受けられます。
しかし、その竹中経済学者を抑えることも、凌駕することもできなかった東大経済学部教授陣、日本銀行研究者、財務省研究者とは何なのか?
(社民・共産系の研究者には無党派市民は何も期待してはいけません。「無党派市民」を演じなければ誰も彼らのブログも読まないものだから、そう演じている・・・)
テレビに出てカネを稼ぐ東大経済学部教授陣、日本銀行研究者、財務省研究者は全く信用できない。
たとえば、「鉄」が他の製品・原材料と異なる特別なものだということはもはや、東大・日銀・財務省で教えなくなったのだろうか?
******* 以下引用 ********
質問:なぜ、アメリカは唯一の超大国になれたのか?
回答:軍事力が強大になるため条件
1:生産力
2:軍を強大にする意志
3:正面装備
4:展開力
1に関しては端的には1900年ころ、粗鋼生産量でイギリスを抜きました。「鉄は国家なり」でして、粗鋼の生産力はストレートにその国の生産力を示します。旧ソ連が、フルシチョフ時代に粗鋼生産力でアメリカを抜くとか、大躍進時代に中国が無理な粗鋼生産増加を計ったのが象徴的です。
2に関しては、第二次世界大戦において、民主主義を守るのは俺たちだと国民が信じたことが大きい。
3は、1と2の結果です。
この辺までは、他の回答者の方も指摘していたので、4に関して。
第二次世界大戦中、アメリカは武器貸与法により、イギリスに大量の武器を「貸与」しました。あげたのではありません。貸したのです。貸したと言うことは後で「返せ」ということで、実際に返させました。
イギリス本土の生活が苦しかったのは、戦争中ではなく、戦後、マーシャルプランが発動する前まででした。
ゲンナマでなく、二つの面でアメリカはイギリスの利権を奪いました。
一つが、戦後金融体制。イギリス代表のケインズは、それまでの基軸通貨であったイギリスのポンドの代わりに(実際、基軸通貨であるのは無理なので)バンコールという国際通貨を提案した。今で言えば ユーロみたいなもので、一つの国家の支配にはならない仕組みです。しかし、アメリカはそれを拒絶、戦後のドル体制を確立した。
もう一つが、海軍基地。
それまでイギリス海軍が持っていた海外の海軍基地を共同利用のようなかたちでアメリカ海軍も使えるようにしました。
この、通貨と海外基地によって、アメリカは軍事力の海外展開力を持つことになったのです。
ロシア・中国の今後
1,2,3は何とかなるかもしれないが、4に関しては実際の陣取り=戦争がない限り変更は難しい。
世界の海軍の軍事拠点は、港湾が地形に依存するためにどこでもいいというわけではありません。帝政ロシアの領土拡大が、南へ不凍港を求めてと言われていますが、それくらい天然の良港は少ないのです。
この回答への補足:
非常に整理された回答をありがとうございました。
また、他の回答者の方とは違って視点でたいへん参考になります。
粗鋼の生産力が18世紀初頭にアメリカがトップに立ったとい史実があるそうですが、そうなれるに至った原因というのは、何かいわれている定説なるようなのが存在するのでしょうか。
確かに当時は特に鉄というものが、工業力の大きさを象徴しているというか、反映を指し示すものだったかもしれまんせんが。
あと、イギリスもナチスとのヨーロッパ戦線での戦いで大量の武器・資金が必要になり、アメリカから借りた結果、それを返すために疲弊してしまったということがあるのですね。
最後の展開力というのも言われてみればもっともで、世界のあちこちに拠点があるので、よほど大きな変動が世界にない限り、当分はこの状況は続きそうですね。
そう考えてくると、アメリカが条件がよかったのは、大洋をはさんだ地理的な位置や、国土の大きさが一因としてあるのでしょうか。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3434231.html
******* 引用END ******
「鉄は国家なり」、「鉄は産業のコメ」など、明治維新以来の大日本帝国発展のスローガンだったようです。
しかし、豊臣秀吉の時代(1600年頃)には、日本は世界最大の火縄銃の生産・所有国でした。
要するに、400年前に、既に日本は近代的鉄鋼産業で世界をリードできるポテンシャルを備えていました。
江戸時代の兵器開発停滞によって、欧米に産業革命は先行されましたが、秀吉の時代から日本はアジアNO.1の産業立国ポテンシャルを有していたのです。
従って、明治維新や戦後の経済成長も、しごく当然の帰結なのです。
問題は、歴史的・文化的・民族的な含意です。「鉄鋼」の。
竹中エコノミストや東大・日銀・財務省も現場から「鉄」の学習をやり直してほしいものです。
★救世主イエス曰く「人の小さな過ちを責める前に、自分の大きな欠点を直せ」
四十一国民さん、本ブログへのコメントをいつもありがとうございます。
「鉄は国家なり」というのは懐かしい響きです。
資本主義を押し進めた結果、日本の産業は国家から離れて企業に分断されてきていることを実感します。
そうしますと、企業の資本力が勝負の分かれ目になります。
結果、資本の大きい者が常に優位で、資本の集中が進みます。
今、日本全体の経済力は大きいのですが、企業単位で見ると世界にはかなわない。
このままでは、大きな資本に飲み込まれていくことが必然となってしまいます・・・
新市場主義なりグローバリズムの推進は、巨大資本への冨の集中にしかなりません。
これは自明なことです。
さて、どうしましょうかね...