2008年09月29日
米国金融機関を襲う、CDSという「大量破壊兵器」
米国の金融崩壊が止まらない。今月25日には、総資産32億ドルの貯蓄信用組合ワシントン・ミューチュアル(WaMu)が倒れ、米国史上最大の銀行破綻となった。次々と起きる金融機関の破綻の陰には、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という金融商品の存在がある。
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◆CDS:他人のデフォルトを賭け合うギャンブル金融商品
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とは、債務者Aでも債権者Bでもない第三者Dが、Aの債務を保証する代わりに保険料(プレミアム)を受け取る、という契約商品。いわゆる連帯保証契約に似ているが、CDSの特徴は、この契約商品を自由に発行し、市場で第三者Eに売ることもできる、という点。その結果、CDSの売り手も買い手も、対象となる債権に関わるAともBとも無関係となることも多い(この場合、Aの債務が不履行になった時に保証金額をDから受け取るのは、AでもBでもなくEである)。
要するに、CDSとは「ある企業や個人の債務が不履行になるかならないか」を、無関係の第三者同志が賭けあうギャンブルだ。
※右図はGarbagenews.comからお借りしました。 クリックで大きくなります。
◆サブプライムローン問題を加速した保証バブル
CDS市場は1995年頃に誕生した。初めは相互保証によるリスク分散を目的とした銀行間契約が主で、市場規模も小さかった。しかし、そこに保険会社とヘッジファンドが目をつけ、住宅ローンなどの小口契約に適用した。保証がつけば怪しい債権にも高い格付けができる。これがサブプライム層への融資を加速させ、同時にCDS市場も急激に拡大した。
その結果、CDS市場は、2007年末には想定元本で62兆ドル(6600兆円)までに膨れ上がった。その約6割はヘッジファンドが抱えるという。
AIGはCDSを想定元本で4410億ドル(約46兆円)販売したとされる。今年上半期で既に約1.5兆円のCDS関連損失を計上していたが、リーマンの破綻で一気にその損失リスクが高まり、経営危機に陥った。
46兆円という数字は6千兆円規模の想定元本総額に比べれば小さい感じもするが、CDSは各企業が相互に債務を保証しあっているので、1社が支え切れなくなるとドミノ倒しで破綻が起き、どこまで及ぶか分からない。この事態を怖れたFRBが異例の緊急融資に踏み切ったのは、AIGがその要の位置にいたからだ。(※グラフはWalk in the Spiritさんからお借りしました)
米国有数の投資家ウォーレン・バフェットは、このように極めて危険な構造を持ったCDSを、「時限爆弾」「金融大量破壊兵器」と呼んだ。
(これまで極めて慎重で堅実な投資家として知られていたバフェットは今回、経営悪化で銀行持株会社への移行を余儀なくされたゴールドマン・サックス(GS)に50億ドルの資本救済を申し出た。その際彼はインタビューに答え、現在の米国の危機的状況を「経済版真珠湾攻撃だ」と表現した。)
◆世界中の誰も手が出せない
前掲の動画によれば、米政府が現在議会にかけている7000億ドル(約75兆円)の不良債権買い取りの対象に、このCDSは含まれていない。
しかし、考えてみれば当然かも知れない。CDSは複雑怪奇に連鎖しているので、あるCDSを「不良債権」と特定することで、別のCDSが次々と不良債権化しかねない。CDSの元本保証の残高は、今年6月段階で初めて54兆ドル(5700兆円)まで縮小したが、まだまだ誰も手を出せるレベルにはない。
米議会は、金融安定化策の政府案は単なるウォール街の救済策であるとの反発から難航していたが、いずれ成立させざるを得ないだろう。だが、その間にも、リーマン、AIG、モルガン・スタンレー、GS、そしてWaMuと続く破綻で着火されたCDSデフォルトの導火線は、次の破綻先を求めて米国~世界を駆け巡っている。
- by s.tanaka at 02:00 in 05.瓦解する基軸通貨


コメント
cdsって最近よく聞くけどイマイチ意味がわからなかった。
勉強になりました。ありがとうございます
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どうやら米国は日本にあれほど強硬に導入を求めて来た時価会計制度自体を見直すようですね。
米SEC、証券化商品への時価会計適用を緩和の方針
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20081001AT2M0100M01102008.html
【ワシントン=大隅隆】米証券取引委員会(SEC)は30日、金融市場の信用収縮で取引が成立しにくくなっている証券化商品などに対する時価会計適用を事実上緩和する方針を発表した。価格が極端に下がっている証券化商品の損失処理の先送りを容認する内容だが、資産評価の根拠などの情報公開の拡充も求めている。金融機関にとっては追加損失の計上が減る可能性がある。
SECは「現在の環境は公正な価格を決めにくい時期」と判断。参加者が少ない市場で成立した売買価格などが会計処理の基準になるかどうかについて実務指針の形で判断を示した。
SECは、時価会計は「正常な取引で成立した売買価格に基づく」と指摘。参加者が少なかったり、売り手と買い手が提示する価格差が極端に大きかったりした場合などは市場が機能していないと判断。低価格での資産評価を会計処理に反映する必要はないとの考えを示した。
> 匿名さま コメントありがとうございます。
CDSは、理論計算上はトータルで決して損も破綻もしない仕組みの筈だったようです。
今回はそのウソがばれてしまいました。
難解な「金融工学」なるものが、何のために存在しているのかを教えてくれる事例です。
>ななし 様 おひさしぶりです。
今のアメリカを見ていると、かつて日本を批判してたのは何だったんだと言いたくなりますよね。
ご都合主義のダブルスタンダードもいいとこです。
心配なのは、これから莫大に押し付けられる筈の米国債と劣化ドル資産です。
24日に始まった日銀のドル供給も、その一環なんじゃないかと勘ぐってみたくもなります。
CDSは、ロト6のようなもの。という表現を聞いたこともあります。マネーゲームの象徴的な商品だなあという印象を受けました。汗水流してお金を稼ぐっていうのは、もう古いのかな。
汗水垂らさずお金を儲けた人がいるってことは
搾取されている人がいるってことですよね
>match様 ねここねこ様 コメントありがとうございます。
ねここねこ様の仰るとおりだと思います。で、いちばんよく騙され、搾取されてきたのが、
そんな米国型金融市場が正しいものと思わされてきた日本だったんですね。