2008年10月12日
基軸通貨の衰退過程と金貸しの動き ~その2~
【②イギリスの金本位制への転換】
第一次世界大戦中は、金の輸送が不可能であったため、各国で金準備のための貯蓄が始まりました。戦争当時、基軸通貨国であったイギリスの金準備は意外にも低水準で、フランスやアメリカはその数倍以上の金を保有していたと言われています。(ちなみに、アメリカの金保有は突出しており、1920年代には既に世界の公的金準備の半数を保有していました)。
大戦後、初めに戦争で莫大な利益を得たアメリカが、1919年に金本位制に復帰しました。これがイギリスにとってみれば、致命的でした。そのため、開戦時4.78ドルだったポンドが1921年には3.78ドルに下落しており、ポンド安でアメリカに金が流出してしまいます。この時代の為替レートは、実体経済での成長と連動するため、ドル高ポンド安はイギリス産業の衰退を表していると理解できます。実際にイギリスは、通貨高になったアメリカへ投資先を移転させ、そこで儲けようとし始めるので、イギリスの輸出産業は衰退していったのです。その結果、イギリスの輸出産業である繊維や石炭業界は大きなダメージを受け、企業は賃下げに次ぐ賃下げを行っていました。これが炭鉱労働者を中心としたストライキに直面することになり、こうした労働者の抵抗により、企業は競争力を失うことになります。イギリスの伝統的な産業が衰退したことも、イギリス国内に大きな不安をもたらすことになり、アメリカへの金の流出を加速することになりました。
そこで、イギリスも1925年に金本位制に遅れて戻ったのですが、長期にわたる戦争で疲弊したイギリス経済が、戦前と同じレート(1ポンド=4.86ドル)で金本位制に復帰したことで、実力以上のポンド高にしてしまいました。これがドル高ポンド安に拍車をかけることになり、金がイギリスからアメリカに流入していくことになります。
英国のプライドを掛け、戦前と同じレートで金本位制に戻したイギリスではありましたが、裏ではイギリスの苦しい台所事情が窺えます。戦争で大きな負担を強いることになったイギリスは、金準備が既に希少となっていたため、実は国内での金兌換を停止していたのです。また、イギリスが金本位制を復活させるためには、どうしてもFRBに協力を仰がざるを得ず、このことからもアメリカの存在感が増大していたことが窺えます。
これらのことから、1919年にアメリカが金本位制に転換したことで、イギリスからアメリカへ国際経済の主役交替の到来を告げていたということが理解できますね。
【1929年の世界大恐慌】
前述しましたが、1925年にイギリスが旧平価で金本位制に復帰したことで、実力以上のポンド高にしたため、金がイギリスからアメリカに流入し、アメリカは低金利にしました。
>この低金利が原因で、1920年代後半に株式投資ブームが起きたが、物価が上昇しなかったので、FRBは金融緩和を続け、バブルを放置した。1929年にバブルが崩壊したが、FRBは、インフレーションを心配して、思い切った金融緩和に踏み切らなかった。こうして、世界大恐慌が始まった。
>1929年の大恐慌に先立つウナギのぼりの好景気は、金融資本家が連邦準備銀行に発行させた大量の通貨が原因でつくり出された見かけ上の好景気にすぎなかった。1929年のニューヨーク株式市場の大暴落に至るわずか6年間に、彼らは資金の供給量を62%も増やし、市場の株価を故意につり上げて中産階級の投資意欲を煽り、やがて刈り取るべき中産階級の資産を株式投資に向かわせた。アメリカの株価が急落すると、彼らは高い額面で買わされた株をタダ同然の安値で手放さなければならなくなった。
>資金供給量を増やしたことで、1920年代にはアメリカでバブルが発生し、それによりヨーロッパに資本投資が増大していくことで、ヨーロッパ経済も経済成長を達成することができていた。しかし、そのアメリカの株価急落から投資家がいっせいに投資資金を引き揚げてしまったので、ヨーロッパ経済は急速に資金繰りに窮するようになった。こうしてアメリカが1930年代に大恐慌に陥ったことで、ヨーロッパ経済も急激な経済活動の収縮状態に陥り、アメリカ経済以上の衝撃を受けてしまった。
まずはアメリカが低金利政策をとり、株式投資によるバブルが膨らみました。しかしNY株式暴落を機に1929年に起こった世界大恐慌を通じて、アメリカ以上に英国の経済力を失わせることになり、大恐慌後の1932年にはアメリカと英国の金保有量の差は6倍に開くことになったのです。
そしてこの後、第2次世界大戦が勃発し、いよいよドルが基軸通貨となるのです。つづく
<参考文献、サイト>
・金融史がわかれば世界がわかる―「金融力」とは何か:倉部康之著(ちくま書房)
・バブルはなぜ生まれるのか?
・20世紀はアメリカとイギリスの闘いの世紀だった
- by senchou at 23:39 in 05.瓦解する基軸通貨



コメント
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今回の金融危機は世界の金融業界の寡占化と独占化と米国の帝国主義を推し進める結果になるかも知れませんね。
全てが計算づくだとすれば大したものですし、恐ろしくなりますね。
自分たち以外の事なんかまったく構ってないんですからね。
彼等による支配体制の確立は何としても防ぎたいものです。
少なくとも我が国が彼等に資金供給をしてその後押しをするのをやめさせたいものです。
> ドル高ポンド安となることで、イギリスの輸出産業である繊維や石炭などの業界は大きなダメージを受け、企業は賃下げに次ぐ賃下げを行いました。
このロジックについてもう少し説明いただけませんか?日本の輸出産業だと、むしろ円安の方が助かりますよね。
ななしさん
>今回の金融危機は世界の金融業界の寡占化と独占化と米国の帝国主義を推し進める結果になるかも知れませんね。(略)彼等による支配体制の確立は何としても防ぎたいものです
同感です。しかし資本家は、マスコミを支配しているため、既存のメディアから情報を得ていては、彼らの情報操作に乗せられてしまうことがあります。自己判断だけでは事実を読み誤ってしまう恐れがあるということです。
彼らの支配から脱するためには、まずは皆で事実を紡ぐことができる場が必要だと思われます。ですから、このような事実を追求するブログが沢山増えているので、それを足掛かりに皆で新たな可能性を見つけていきましょう。
あみやさん
> ドル高ポンド安となることで、イギリスの輸出産業である繊維や石炭などの業界は大きなダメージを受け、企業は賃下げに次ぐ賃下げを行いました。
コメントありがとうございます。確かに、記述が曖昧でした。
通貨高→生産力▼→経常赤字(利益▼)→通貨安
|| ||
産業▼ ||
|| ||
||投資先移転 ||
||金流出 ||金流出
↓↓ ↓↓
通貨安→生産力△→経常黒字(利益△)→通貨高
|| 産業△
上の図解で、はじまりに通貨高と書いた国が【イギリス】で、通貨安となっているのは【アメリカ】と捉えてください。
基軸通貨になったポンドの価値は上がり、始めは通貨高になります。(現在の経済は、マネーと連動して為替レートは決まっていますが、この時代は実体経済での成長と連動しています。)しかし通貨高になると、輸入ドライブが始まり、自国の生産力は衰退し経常赤字となります。
一方、アメリカのように徐々に力をつけてきた国は経常黒字となるため、イギリスは投資先をアメリカに移転させ始め、そこで儲けようとします。その結果、イギリスの輸出産業は衰退していくのです。(⇒さらに実体経済で儲からないイギリスは投機に走り、29年のバブル崩壊で大打撃を受ける。)
そして、為替はドル高ポンド安となるので、アメリカに金が流出していきます(当時は金本位制なので、通貨高の国に金が集まる)。
ですから、本文ではドル高ポンド安から因果関係で繋げていますが、それはこちらの誤りです。⇒修正しておきます。
イギリスからの金の流出に、裏で動く金貸しの姿が見えるようですね。どんな手段を使ったのか、用意周到な方法だったのでしょうね、イギリス人気質まで入り込む金貸しの周到さに驚嘆です。
金貸したちは、ドルを基軸通貨にして、より一層の利益を得るために大恐慌をおこして、それをきっかけにポンド→ドルへ移行したのでしょうか。だとしたら、自分たちの利益のためには、何人犠牲になろうがお構いましということですね。今回もそうなるんでしょうか。不安です.
イギリスからドルへと基軸通貨が移動したのは、基軸通貨が持つ自然の崩壊構造のほかに、人為的な操作が影響していたんですね。
金貸したちの策略とはいえ、その手口のうまさには脱帽します。