2009年12月21日
宇宙船地球号パイロットのマニフェスト(4) トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画
前回も冒頭に述べましたが、非電化地域の住民であるBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)にこそ、優先的に電力を届けることが筆者の悲願です。BOP優先は、否応なしに低コストを迫ります。既存のウラン-プルトニウム・サイクルの原発による発電コストには、公表されない隠れコストも云々されていますが、発電所建設のコストの8割は、苛酷事故に対するセキュリティにかかるコストであると言われており、苛酷事故のないトリウム原発では不要なコストです。もちろんトリウムとウランの原料価格にも大差があります。
したがってBOPへの電力供給に適うエネルギー源は、今のところトリウムをおいては考えられません。この事実を共認することによってこそ、生産的な次世代エネルギー論を展開できるのではないでしょうか。それでは議論を先に進めることにしましょう。
ということで、4回目をお届けしますが、例によって今後の進捗を一覧にしておきます。バックナンバーについては、リンクになっています。
1.「石油・ドル本位制」に代わる世界システムをつくる
2.石油に代わる代替エネルギー資源としてのトリウム
3.人類が必要とする8万kWe、84万基のトリウム原子炉
4.トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画(本稿)
5.トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」
6.地域通貨「アトム」から国際準備通貨「UNI」への出世街道
7.「見えざるカミの手」による布石か? シーランド要塞跡
8.金融崩壊の今こそ、金融再生を担う新しい人材が必要
9.工程表に従い、エンジニアリング企業とシーランドを確保
10.2050年の人口を基に策定したマーケティング・エリア
11.総額1680兆円の建設費を要するトリウム・エネルギー
12.トリフィン・ジレンマのない「アトム」だから「UNI」に出世できる
13.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(上)
14.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(下)
ありがとうございます。
ピーク時日産30基のトリウム炉を生産する凄まじい生産計画
私は生前のソニーのファウンダー、井深大氏にご厚誼をいただいていました。あるとき井深氏は、ソニーが初めてポータブルCDプレーヤー(CDウォークマン)を開発したときの秘話を、私に聞かせてくれました。13センチ×13センチ×4センチに材木を切り出して、これを開発チームに渡し、このサイズのCDプレーヤーを作れと命じたのだそうです。
私の頭の中には、この時の記憶が鮮明にあり、この記憶があったればこそ、コンテナサイズの原子炉を作ろうという発想が閃いたのです。私はこのような発想がきわめて重要だと思っており、発想ができた瞬間に、無から有という価値が生まれるわけですから、その瞬間に物事は成就したものであると受け止めることにしています。確かに発想が閃いたあとも、いろいろと苦難のハードルはあるわけですが、それは高々プロセスに過ぎないわけで、やはり物事は、思った瞬間に成就するというのが、私の信念です。
それにしても、一口に84万基と言いますが、その生産自体、とてつもなく大変なことです。うまく生産計画を調整しても、ピーク時で年産8,400基程度になります。年間280日の稼動として、日産30基のペースです。航空機業界では、2002年~11年の10年間の生産は、ボーイングが3,587機、エアバスが3,163機で、合わせて6,750機でした。年産にして675機……。年間280日の稼動として、日産2.4基ですから、これと比較しても、トリウム熔融塩原子炉の日産30基の凄まじさは、推して知るべしでしょう。
しかも蒸気発生器やタービンや発電機など、この炉の数に見合った発電設備や送電設備(グリッド)等のインフラも、原子炉に付帯して生産されなければなりません。
人類の1/3は非電化地域に住み、1/3は100W以下の電力で暮らしている
この84万基を2050年の予測人口分布に比例して、グローバルに満遍なく配備すると仮定すると、2050年に994万人となる東京都には、累計1,326基が建設され、2065年のピーク時には392基が稼動している計算になります。東京都には201校の都立高がありますので、ざっと都立高1校に2基配備されるイメージです。もっとも日本でトリウム炉が実用化されるようになるのは、多分世界中でも最もドンジリの方になるのではいかという気がしてなりませんが……。
いっぽう現在1億4千万人が住むバングラデシュは、2050年には2億8千万人へと、ちょうど倍増する見通しですが、この国には、世代交替をしながら累計で25,836基が建設され、それぞれ平均30年稼動した後、引退していくという計算になります。この数字は、日本に配賦される9,218基のほぼ2.8倍です。
私は世界初の実用型トリウム原発を、3年後を目処に、このバングラデシュの首都ダッカのナラヤンガンジに、BRACとの共同事業として建設できないかと検討を始めています。BRACといえば、NHKスペシャルの「沸騰都市ダッカ“奇跡”を呼ぶ融資」の中では、縫製業の起業家、イスラームさんの縫製工場が、工場開設の初っ端から電力不足のトラブルに巻き込まれ、縫製用のミシンが動かなくなるシーンがありますが、BOPマーケット開発のエネルギー・インフラとしての電力がもつ意味を、典型的に象徴しているシーンだと思いました。
現在人類66億人のうち3人に一人(22億人)は非電化地域に住んでいて、電力の恩恵を全く受けていません。また3人に一人(22億人)は100W以下の電力で生活しています。この現実を見る限り、「エネルギー」の問題は、40億とされるBOPの世界に重点を置いて解決されなければなりません。私が設計したコンテナサイズの「トリウム熔融塩原子炉」は、究極のシンプル設計と大量生産も相俟って、画期的な低コストの電力を実現する可能性を秘めています。
世界を128のエリアに分割して推進していくトリウム原発建設計画
ちなみに十分な量産が可能になれば、上記の8万kWeのトリウム原発1基の生産コストは、20億円前後になることが想定されます。また生産コストを償却した後のメンテナンスコストは、電力受給者一人当たりで年間約40円程度が見込まれます。いずれ電力は、文字通りBOPの世界を含めて、2050年における全世界人口90数億人に、一人残らず低コストで供給されるようになるはずです。

私はまずアジアで最も貧しい国とされるバングラデシュで、BOP独特の電力供給のビジネスモデルをつくりあげ、開発途上国を優先しつつ、全世界を2050年の予測人口(9,101,534,000人)を基準に、ほぼ等しく128のマーケティング・エリア(別添資料「トリウム原発建設計画」参照)に分割し、電力供給の事業展開を進めていく考えです。
128のマーケティング・エリアには、それぞれに「リージョナル・サプライ・センター」(RSC)を建設しますが、その1エリア当たりの平均人口は7,111万人、最大稼動時のトリウム原発の数は1,940基/エリア、原発1基で平均36,650人の人口に電力を供給している状態になります。
それぞれのマーケティング・エリアにおけるビジネスモデルは、著書「21世紀の国富論」、「新しい資本主義」で有名な原丈人氏が率いるデフタ パートナーズが、バングラデシュにおいてBRACと共同でつくった「デフタ・bracNetモデル」を参考にしてこれを応用していきたいと考えています。
まずはバングラデシュにおいて、「みんなの年金」基金とBRACの資金との共同出資によって、世界初のトリウム原発電力会社を興そうと考えています。そしてゆくゆくは、「みんなの年金」の各国版の基金を、地産地消で運用することによって、トリウム原発電力会社網を世界中に広げ、一刻も早く地球上から、非電化地域をなくしていくことが、私が到達したマーケティング政策の結論です。
((5)トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」 につづく)
- by Dr. Done at 18:00 in 07.新・世界秩序とは?



コメント
ソニーの井深氏が初めて作ったポータブルCDプレーヤーの話がヒントとなって
コンテナサイズのトリウム原子炉が発想できたという話、凄いですね。
ウォークマンのように世界中に広まる予感がしますね。
トリウム熔融塩原子炉の日産30基の凄まじさはホント実現可能なのでしょうか?
都立高1校に2基配備のイメージとありますが、1基につきコンテナ3本が配備
されるのでしょうか。ホント凄まじいことになりそうですね。
現在日本では十分な電力が国民にいきわたっていると思いますが、今のある電力を
全てトリウム原子炉でまかなう、といった場合に想定されてる数が都立高1校に2基配備
ということですよね?
イメージがつかないのですが、トリウム原子炉の発電量と現在の電力発電施設の発電量を
面積当りで比較するとトリウム原子炉の方が断然効率がよいのでしょうか?
今まで、ある地域に集中されてた電力施設が、トリウム原子炉により各地域に分散されると、
多くの人にとって電力施設が急に目の前に出てくるので、今までの電力施設よりトリウム原子炉
の方が面積あたりのエネルギー効率がよいのかな?という疑問も出るのだろうな、と思いました。
世界の3分の2の44億もの人が100W以下もしくは非電化の地域で住んでいるなんて、
日本にいると全く考えられない事実ですね。非電化の地域がこんなにあるとは想像もしませんでした。
現在インフラが整っていない地域に、この安全でクリーンで安価(償却後は年40円!)な
新しい技術が広がることはホントにすばらしいですね。
日本などのインフラが整ってる地域のエネルギーを転換させる場合でも、発電施設だけを
変えて既存のインフラ(電線)などを使う事はできるのでしょうか?そこから作り直す必要が
あるのでしょうか?
ちなみに8万kWeのトリウム原発1基の生産コストは、20億円前後とありますが、生産コストは
どれくらいの期間で償却され、その時の電力受給者一人当たりで年間いくらくらいになる予定な
のでしょうか?
BOPの人たちでそのお金は負担していけるのかな、と思いました?
不勉強でたくさん質問を書いてしまい申し訳ないですが、ご教示いただけると嬉しいです。
かつさん、いつもコメントありがとうございます。Done Done!
現在のウラン-プルトニウム・サイクルの原子力発電所は、全て人里離れた海岸沿い(例えば若狭湾)にあり、そこから延々都会の消費地(例えば東京)まで、野越え山越え、超高圧線を通って送電されます。膨大なコストがかかることは、言うまでもありません。本来エネルギーは、消費地において、必要に応じて生成されることが理想です。つまり分散型であることが望ましいのです。トリウム原発は、銀座4丁目であろうが、皇居の中であろうが、ずばり消費地に建設することが可能ですし、またそれが理想です。
最終的には、一家に一台、冷蔵庫サイズのトリウム原発という時代が来るでしょう。アメリカでの研究開発は、ローレンス・リバモア研究所、アルゴンヌ研究所、ロス・アラモス研究所が三位一体となって、究極「一家に一台トリウム原発」を目標に、国家規模で進められています。そうなると、現在の配電(グリッド)インフラは、無用の長物と言うことになりますし、スマート・グリッドなども、サイエンス・フィクションで終わるかもしれません。もちろん筆者が設計しているコンテナ・サイズのトリウム原発は、アメリカ、その他で開発されているトリウム原発よりも、数年早く実用化され、マーケット・リーダーになることは間違いないものと確信しています。
8万kWeのトリウム原発1基の生産コストは20億円前後と書きましたが、この原発の寿命は、定常出力4万kWeで運転するとして、30年を想定しています。この原発1機でカバーする人口は、平均36,650人を想定していますので、金利を度外視すれば、2,000,000,000/36,650×30×12≒150ですから、人口一人当たり年約150円の負担ということになります。維持費や金利に利益を含めても、年500円をみればいいのではないでしょうか。こうなれば、1日1ドル以下の究極のBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)でも、十分支払えるコストであると言えるでしょう。
日本のような先進国では、確かに70年代より貧困は消滅し、活力が衰弱する中で、「需要発」から「供給発」へのパラダイム・シフトが必然となりますが、それは実に世界の所得ピラミッドのTOP(トップ・オブ・ザ・ピラミッド)における先端的現象であって、40億人とも言われるBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)の世界では、この21世紀、恐ろしいほどの規模と勢いで、需要発の産業が勃興し、「ネクスト・マーケット」と言われる活力に満ち満ちた市場が興隆すること、間違いありません(C.K.プラハラード著、英治出版刊、「ネクスト・マーケット」をご参照ください)。このBOPの需要の爆発を可能にするエネルギー・インフラとなるのがトリウム原発であることは、疑いようがないことです。
この小論は、次世代エネルギーに関して、そのグローバルな産業化を、詳細なビジネスモデルにまで落としこみ、数値や金額レベルまで提示したマーケティング・プランとして、人類史上の嚆矢となるものであることを自負しています。次回はいよいよ、ドルに代替する基軸通貨が登場します。乞う、ご期待!
Dr. Done
>私はこのような発想がきわめて重要だと思っており、発想ができた瞬間に、無から有という価値が生まれるわけですから、その瞬間に物事は成就したものであると受け止めることにしています。
この感覚が持てるってスゴイですね☆
実現する方法を考え抜いていて実現してきたからこそもてる感覚なんだろうなぁ♪ステキです☆
質問したいと思ったことがかつさんがして下さっていました☆
↓この2つ☆
>ちなみに8万kWeのトリウム原発1基の生産コストは、20億円前後とありますが、生産コストはどれくらいの期間で償却され、その時の電力受給者一人当たりで年間いくらくらいになる予定なのでしょうか?
>BOPの人たちでそのお金は負担していけるのかな、と思いました?
それに対するDr.done氏の返信にある
>40億人とも言われるBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)の世界では、この21世紀、恐ろしいほどの規模と勢いで、需要発の産業が勃興し、「ネクスト・マーケット」と言われる活力に満ち満ちた市場が興隆すること、間違いありません
内需が拡大するという話なのでしょうか?先進国での購買欲▼で国外への輸出は限られると思うのですが、日本のように外需需要△で経済成長は期待できないと思って。
>次回はいよいよ、ドルに代替する基軸通貨が登場します。乞う、ご期待!
基軸通貨とどう繋がっていくんだろう???楽しみにしています☆
mihoriさん
毎回のコメント、ありがとうございます。Done Done!
アメリカ一極集中型のグローバリズムが破綻したからといって、世界に68億人の人々が生活と生殖を続けている限り、グローバルには、「需要発」の産業エネルギーが減衰することは絶対にありえないし、むしろ、「需要発」のエネルギーが爆発するのは、例えば携帯電話の需要に見られるように、まさにこれからだと思います。「需要発」から「供給発」へ、という局面は、例えば携帯電話のガラバコス現象に見られるように、ピラミッドの上部(TOP)における比較上の小さな層に生まれた成熟現象であって、この成熟がピラミッドの層全体に及んでいるわけではありません。
私は一日本人として、「宇宙船地球号のパイロット」という自分の立つべき「立ち位置」を選択して以来、日本という国の国境を意識した「内需」、「外需」という発想をすることが少なくなってしまいました。すると、自ずと「需要発」から「供給発」へのパラダイムシフトを必然とする日本の国内事情が視野に入る前に、「恐ろしいほどの規模と勢いで、需要発の産業が勃興し、『ネクスト・マーケット』と言われる活力に満ち満ちた市場が興隆する」BOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)の世界に心が弾んでおりますし、そこに活躍の場を定めることこそ、日本人としての誇り高い生き方ではないかと思えます。
龍馬が海援隊の夕顔丸のキャプテンとして、日本の未来のために、「戦中八策」というマニフェストを策定したように、私たちは、宇宙船地球号のクルーとして、サスティナブルな人類共同体の創造のための、「宇宙船地球号のマニュフェスト」を策定し、実現させなくてはなりません。そのマニフェストの根幹をなすべきものこそ、「石油・ドル本位制」に代替する世界システムであると思っています。そしてその指針は、ノーベル経済学賞受賞者、ジョセフ・スティグリッツ博士の国連における「スティグリッツ報告」に、余すところなく盛り込まれていると思います。「スティグリッツ報告」こそ、まさに今の時代にフィットした最善の経済学の教科書であると思っているのです。そしてそういう意味で、「経済学って、正しいの?」という問いに答えるならば、答えは「Yes!」だと思っています。いやむしろ、私たちは常に、正しい経済学を必要とし続けるわけですし、進化させ続けていかなければなりません。
次の第5回、スティグリッツ博士が登場します。コメント期待しています。
Dr. Done
mihori様
「戦中八策」???
「船中八策」の変換ミスでした。トホホ・・・。
Dr. Done