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2010年01月03日

GDP信仰からの脱却4~民主党『新成長戦略』から

new_economy_strategy.jpg年末も押し迫った12月30日、民主党鳩山政権は『新成長戦略(基本方針)』を発表した。これによると、2009年度に473兆円だった名目GDPを2020年度までに650兆円に引き上げることが目標だという。今回は、このレポートを題材にGDPという指標について考えてみたい。


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●新成長戦略が掲げる「第三の道」とは?

「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」より抜粋。

(第三の道:成長戦略で新たな需要・雇用をつくる)
私たちは、公共事業・財政頼みの「第一の道」、行き過ぎた市場原理主義の「第二の道」でもない、「第三の道」を進む。それは、2020年までに環境、健康、観光の三分野で100兆円超の「新たな需要の創造」により雇用を生み、国民生活の向上に主眼を置く「新成長戦略」である。

GDPとは「国内で金が動いた量」であり、どのようにして金を動かすかで、上の第一~第三の道の違いが出る。まず、前回前々回の記事から、GDPが増えるのには大きく3つの方法があることが分かる。


①政府・公共団体が財政出動して消費・投資を行う。
②個人や企業による国内消費・投資が拡大する。
③輸出が拡大する。


「第一の道」とは、①の財政出動、とりわけ公共事業を契機に②を喚起する方法。これは高度成長期までは有効に機能したが、'70年貧困の消滅以降は一過性のカンフル剤にしかならなくなった。「第二の道」とは、②の一種だが、GDPの構成要素である企業利益をまず上昇させようという方法。小泉政権の構造改革がこれだが、結果は格差と国の借金を大きくしただけだった。


民主党は「第三の道」をとり、これは「需要の創造」だという。これは、②の方法。即ち「民間最終消費」「民間住宅投資」を中心に据えるということ。では、その金はどこにあるのかといえば、個人金融資産1400兆円を初めとする日本の貯蓄しかない。つまり、第三の道とは民間貯蓄を刺激して動かそうという戦略だ。


●実態は、やはり政府主導のカンフル剤にしかならない?


「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~より抜粋。

-GDP成長率:名目3%、実質2%を上回る成長(2020年度までの平均)
-名目GDP:2009年度473兆円(見込み)を2020年度650兆円程度
-失業率:3%台への低下(中期的)
を目指す

名目GDP成長の中心となる新規市場100兆円超とは、環境50兆円、健康(医療・介護)45兆円、観光(訪日外国人の増加による経済波及効果)10兆円だという。失業率の低下は確かに重要な課題だ。しかし、それに加えて、これだけの新規市場が本当に、財政による景気刺激分を超えて動き出すのだろうか?


年末の本ブログ記事でも紹介した2010年度予算案は、史上最高の一般会計92.3兆円、国債発行額も税収を超え過去最大の44.3兆円であり、民主党の成長戦略も、やはり政府の財政出動頼みに終わる可能性が大きい。そして、投入分野が橋や道路などの公共工事から環境や観光に移ったとしても、金の出所が一緒ならば、やはり無駄なカンフル剤にしかならず、まして、介護・福祉でのバラマキは国民の活力を逆に削ぎかねない。


ここでも、成長しなければならない=GDPを上げなければならないという固定観念が、国民の活力を上昇させる健全な政策の発案を阻んでいるように見える。


●マクロ経済方針の疑問
「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」の後半、「マクロ経済運営」の項(p.33)に、次のようにある。

デフレは、経済、ひいては国民生活に大きなマイナスの影響を及ぼす。デフレの克服を目指し、政府は、日本銀行と一体となって、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む。また、家計が得る所得が増加し、国民が成長を実感できる名目成長率の実現を最重要課題と位置付けた経済運営を行う。具体的には、2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長、2020年度における我が国の経済規模(名目GDP)650兆円程度を目指す。
現在、日本はデフレ不況と呼ばれ、ここでも書かれているように物価上昇率はプラスが望ましいとされる。しかし、単純に考えて、物価が下がるのがなぜ悪く、上がるのがなぜ良いのか?これも、成長ありきの固定観念と制度ゆえではないだろうか?この、インフレ、デフレとGDPという問題についても、このシリーズのどこかで考えてみたい。

コメント

貨幣価値の下落無し(つまりインフレ)じゃないと膨大な債務返済は不可能だからでしょうね。
またインフレ期待が無いと人間は消費しないで貨幣を退蔵させる傾向にあるようです。
また経済規模の縮小はより弱者に厳しい社会になると言う事でもあります。
それから民間の活力を出す一番の方法は市場の拡大=最終需要の拡大しかないと思いますね。
それを国内に重点を置くのか海外に重点を置くのかの違いだと思います。
海外に重点を置いてもいずれは円高と言う形で報復されますから賢明ではありません。
それはプラザ合意以降身にしみてるはずです。
また内需拡大と適度なインフレは円高圧力抑制にも効果的だと思いますね。
為替介入による円安誘導は使えない米国債の積み増しに繋がるだけです。
今や日本の対米資産は官民併せると700兆円を超えてるそうですが、使いたくても使えませんよね。
使えば米国の息の根を止める事、すなわち世界経済の息の根を止める事に繋がりますから。
またそれは同時に日本人に還元されるべき富が米国に還流してる証であるとも言えますよね。
日本のGDPの約1.5倍、日本の借金とほぼ同額であります。

  • ななし 2010年01月04日 10:32

ななしさん、明けましておめでとうございます。

債務返済と貨幣退蔵の話は分からないでもないのですが、今や幾ら金融緩和しても景気刺激をしてもインフレにはならず、なんとかインフレ状態をつくりだそうと政府債務を重ねる、みたいな転倒した状況が続いています。この点、政府紙幣ですらやや小手先感があります。

そもそも、最終需要が拡大しなくなったから政府債務でカンフルを打つしかなくなった疑いが濃厚なので、これはそもそも何か根本的に変わったんじゃないかと。この辺を考えてみたいのです。

為替介入は、米国債しか買えないならもう止めるべきでしょうね。一気に息の根を止めないまでも、他に迷惑のかからない安楽死路線を模索する時期ではないかと思います。

  • s.tanaka 2010年01月04日 23:29

>物価が下がるのがなぜ悪く、上がるのがなぜ良いのか?

良い悪いではなく、借金している人はインフレにならないと利息で死ぬからです。借金していない人はデフレでも問題ない。

しかし、国が借金漬けなので、個人も企業も、この成長絶対から逃げることはできません。

  • lol 2010年01月05日 16:43

lol さん、コメントありがとうございます。

>国が借金漬けなので、個人も企業も、この成長絶対から逃げることはできません。

貨幣価値が下がる(インフレ)方が若者etc貯蓄の少ない層に有利、という話もありますが、
本質は国も民間も借金経済だから、ということのようですね。

ふむ。政府紙幣肯定&インフレ推奨派の人たちの言い分がちょっと分かりかけてきました。

  • s.tanaka 2010年01月07日 01:54

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