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2010年02月21日

GDP信仰からの脱却10~ブータンが模索するGNH(国民総幸福量)

前回記事では、フランスのサルコジ大統領を旗頭とし、スティグリッツ博士らがチェア・マンとなって進められている新しい社会指標開発の動き=CMEPSP(経済のパフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会)の報告を紹介した。

今回は、ポストGDPの先駆けともいえるブータンのGNH=「国民総幸福量」という指標開発の現状について紹介する。

bhutan_rc.jpg
写真はこちらから。

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■GNH開発の経緯

改めて、GNH開発までの経緯を簡単に整理すると次のようになる。
日経エコロミー~ブータンの「GNH(国民総幸福度)」に学ぶ発展の哲学より引用。

 国の力や進歩を「生産」ではなく「幸福」で測ろうというこの「GNH」の考え方は、1976年の第5回非同盟諸国会議の折、ブータンのワンチュク国王(当時21歳)の「GNHはGNPよりもより大切である」との発言に端を発しているといわれています。(中略)1960年代~70年代初め、ブータンでは先進国の経験やモデルを研究しました。その結果、「経済発展は南北対立や貧困問題、環境破壊、文化の喪失につながり、必ずしも幸せにつながるとは限らない」という結論に達したそうです。そこで、GNP増大政策をとらずに、人々の幸せの増大を求めるGNHという考えを打ち出しました。


そして近年、国王が提起したGNHを実際に指標化しようとする動きが起こる。


 もともとは、幸福という概念は主観的なものですし、国際的に一律の尺度で測れるようなものではないため、GNHはあくまでも概念的なものとして考えられていました。しかし、GNHという考え方が知られるようになり、「GNPのように、指標として数値化できないか」という声が高まったこともあって、1999年にブータン研究センターが設立され、具体的な研究がスタートしています。


2007年には、GNHという概念がブータンの憲法にも位置づけられ、研究が本格化してきた。研究には日本人も数名が参加しており、数年に1度、持ち回りの形で国際会議が開催されている。


では、GNHでは、人間の幸福なるものをどう計測しようとしているのだろうか?


■“幸福量”を測る9つの要素

現在、GNHの研究では、人間の幸福を9つの要素に分けて検討しようとしている。ネットサロンメンバーの調査によると、さらにこの9つを次のような幾つかの要素に細分化して、国民へのアンケートを実施して、分析を進めている模様だ。

◎living standard(基本的な生活) ◎cultural diversity(文化の多様性) ◎emotional well being(感情の豊かさ) ◎health(健康) ◎education(教育) ◎time use(時間の使い方) ◎eco-system(自然環境) ◎community vitality(コミュニティの活力) ◎good governance(良い統治)

2005年には、ブータンで初の国勢調査が行われた。アンケート項目は数百に及ぶが、中で特徴的なものは次のようなものだ。

【満足度】自分で幸せだと思うか、幸せになるにはどのようなことが必要か? 【精神面】自分自身がスピリチュアルだと思うか?お祈りや瞑想をするか? 【自殺について】自殺を考えたことがあるか?実行しようとしたことがあるか? 【環境に関する教養】身近な植物の種に関する知識、水路のメンテナンスが重要だと思うか、自分で植林をするか。 【Cultural literacy】地域の祭り、祭りの意味、祭りで行われるダンスや歌の意味の知識について 【信用感】ブータン人/近所の住人をどれだけ信用しているか?
上記の「満足度」の質問で9割以上が「満足している」と回答したことは日本でも話題になった。ともかく、日本でなじみの国勢調査と違い、精神面や文化面などの主観的アンケートも含めて、あらゆる項目が網羅されている感がある。


GHN研究の中心となっているブータン国立のブータン研究センターには、国連開発計画(UNCTAD)からも32万ドルほどの拠出金が出ている。まずは国民の生活や意識の実態を調査している段階で、GNHとして指標化するのはまだ先のようだ。


GNHは、あくまでブータンという固有の国のための指標として考えられているという。だから、日本や欧米のようないわゆる先進国に適用できるわけではない。ただ、これまで経済的豊かさだけを求めて突き進んできた日本や西欧諸国が転換を迎え、新たな拠り所を探るヒントの一つとして、ブータンの試みに注目しているのだろう。


■『幸福度』は、次代の指標たりえるか?

前回記事で紹介したスティグリッツらが関わっている新指標も、今回のブータンのGNHも、『幸福度』というものがキーワードになっている。しかし、個々人の主観的幸福感をリサーチし、その上昇を目指すアプローチが有効かどうかは疑問だ。自分がなぜ幸福と感じるのか(あるいは幸福でないと感じるのか?)を的確に言い当てられるかというと極めて怪しく、そこから導かれる施策も甚だ総花的、対症療法的なものになってしまう可能性が大きい。


むしろ、社会的指標というものは、「自分(個々人)がどう感じるか」よりも「これkらの社会に何が必要か」という俯瞰的な視座から生まれるのではないだろうか。むろん、フランスの取り組みやGNHにもそのヒントはある。次回は、この新しい指標の切り口を摘出してみたい。

コメント

>国の力や進歩を「生産」ではなく「幸福」で測ろうというこの「GNH」の考え方

すご~い!!面白いですね☆
幸福度を指標にしようなんて考えがあるんですね。基準を定めるのはどうやるのかなって思いますが、そういった動きがあるってなんかいいですね☆

  • ちひろ 2010年02月22日 21:35

ちひろさん、コメントありがとうございます。

社会の姿やあり方を経済や生産ではない物差しで測りたいと人々が感じ始めることは、
“ポスト”物的豊かさの時代における必然的な流れだろうと思います。

ただ「幸福」という抽象概念では、なかなか形にならないだろうとも感じます。
幸福感を生むより普遍的具体的な実態は何か?が答えになるのではないかと考えています。

  • s.tanaka 2010年02月26日 02:26

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